そこは木の一本も生えていない場所でした。


きれいに整備された川岸は人間にとっては気持ち良さそうな散歩道。


しかし、そこは他の生き物を完全に拒絶している場所でした。




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ここには かつて集落があり

そこで暮らしていた野良猫が

マンションの建設開発で生き場を失い

取り残されてしまった所

そんな場所に行ってきました


約100匹ほどいた猫たちは

現在 地元の住民やボランティアの人々に助けられたり

または死んでしまったりしながら数を減らしていき

12匹を残すのみになってしまいました


今回 私は長年猫たちのお世話をしておられる

おじさんに同行させていただき

猫たちを撮影してきました


きれいに整地された堤防の上に立ち見渡すと

100mくらい離れたところ

人工物が何もない土手の下に

ぽつんと事務机があります

その様はその場所に全くそぐわない

異質のものだったのです


普通河川敷は国土交通省の管轄になっていて

勝手に物を置いてはいけません

しかし この事務机こそが

猫たちの命をつなぎとめる

一番大事なものだったのです


この机が かれらの家です

雨が降っても全員が入ることのできない

小さな小さな机の家

かれらはここで暮らしていたのです






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急な土手を降り

おじさんが机を目指して歩いて行くと

机の周りにいた猫たちが

一斉にこちらを見ます

そして




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そのうちの一匹がこちらに近づいてきて

私たちをお迎えしてくれました





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おじさんが机に到着しても

猫たちは慌てず騒がず淡々としていて

食事が安定して与えられていることが窺えます


とはいえ

食事の支度をしている おじさんを待つ

そのしぐさの中には

確かな喜びの表情が見られます







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よそ者である私がいても逃げようとしていません

猫たちは人間にはあまり馴れていないようですが

おじさんがいることで

私はここに居ることを許されています







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先を争うこともなく黙々とご飯を食べ終え






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お腹を満たした猫たちは

仲の良いもの同士で舐め合ったり

ひとりが好きな子は

少し離れて自分でグルーミングしたり

食後の平和なひと時を楽しんでいました







後編に続きます