2011年8月11日
                                             
                                              
                                              
夜が明けて1時間ほど

私は福島の阿武隈山地にいました


当時 福島第一原発からの半径20キロ圏内は

警戒区域となって立ち入りが制限されていて

閉ざされた20キロ圏内では

猫たち犬たち家畜たちがお腹を空かせて

人間が帰って来るのをひたすら待っていたのです


警戒区域に立ち入ることは違法行為

しかし当時動物を見捨てることができなかった

ボランティアさんや私は

たとえ捕まっても

それでもいいとバリケードを突破して

区域内に侵入していたのです




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山間部の道はバリケードも手薄な場合が多い

私は自分専用の良い侵入カ所を見つけていました


当時自分の車というものがなく

カミさんの車を借りて福島に来ていました

かわいいココアです

でもよく走ってくれましたよ



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バリケードに到着

柵をワイヤーで固定してあります

そしてワイヤーをしっかり固定する南京錠

ワイヤーをカットしない限り侵入は難しい

カットか・・・

しかしたとえカットしてその日侵入は出来ても

後日見回りに来た人間が気が付けば

また新たなワイヤーで固定されてしまう

さらに

もっと強力なバリケードになる可能性もあるので

目だったことはできない

そこで私は一計を案じました




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この南京錠・・・

破壊して同じものを購入して付け替えちゃった

やっぱり器物損壊になるんだろうな

カギはもちろん私だけが持っている

こんな田舎道のバリケードから入る

行政の人間もいないので

彼らがするのは

ちゃんと鍵が掛かっているかのチェックだけ

南京錠はしっかりかかっているので

ここから侵入していることはバレなかったのです


もう時効だと思うから話すのですけどね




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侵入してしまえば殆ど誰とも会うことはない

阿武隈山地の山道をトコトコ走り

海側に降りると大熊町に出ます

大熊町は原発立地町で

線量も高く危ないと言われていましたが

長期的には分かりませんが

短期的にはどうということもなかったので

平気で活動していたのです




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寄った駅が常磐線JR大野駅

原発の最寄りの駅です

もちろん人っ子一人いないし

いつまでか分かりませんが当分列車が来ることもない

生活音がまったくしない

風の音だけがやたら大きく聞こえました


ここらあたりにも

犬や猫がいたことは分かっていたので

フードを置く準備していたら




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はっ

猫がいる!

今日は 8月11日

震災からちょうど5か月も経っている

この子は5か月も

人のいないところで生きていたのか

食べものはボランティアが置いた餌だけ

ボランティアがいつ来るかも分からないところで

茶白猫は必死で生きていたのでしょう


そう思ったら

これは連れ帰らねばならないと

東京のボランティアさんに

預かっていただけるかどうかを連絡

連れて帰って良いと許可を頂き

捕獲器を設置




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ガタイはいいけれど痩せています

手前に捕獲器を置きました


刺激しないように離れて様子を見ます

頼む 入ってくれ!




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来た!


後ろにあるキャットフードはすでに空っぽ

お腹が減っていたんだろうなあ


いいぞそのまま奥に入るんだ!





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カシャン

しまったあああ!(茶白猫)



ねこちゃんねこちゃん

扉は閉まったけれど 君はしまってないよ

大丈夫

この時は肝を冷やしただろうけど

君は凄いチャンスを手に入れたんだ

とんでもなくラッキーな猫だったんだよ



この茶白猫は東京に連れて帰り

すぐに里親さまが決まった

その里親さまに大事に大事にされて

震災や原発爆発 5か月間の放浪

そんな大変だった過去のことなどすべて忘れ

何年も生き

先日 6日

ついに虹の橋へ旅立ったのです

晩年は心臓が悪くなったりあちこち不調だったそうですが

保護後12年も生きましたよ

推定20歳に届くかどうかくらいの年齢でした


最期までスーパーかわいくって賢くて優しくておおらかなとても良い子でした。

飼い主さん絶賛の猫です



福島で保護したから「福ちゃん」

たくさんの仲間が死んでいった福島で

運良く保護され幸せになった

数少ない猫



福ちゃん お疲れさま 良かったね



そして飼い主さん

福ちゃんを幸せにしてくださり

本当にありがとうございました